Archive for 08 January 2006

08 January

鈴木規雄さんの死を悼む

鈴木規雄さん このブログの初めての書き込みが、こんな悲しい話になろうとは思ってもみませんでした。朝日新聞の鈴木規雄(すずき・のりお)さんが7日、急性骨髄性白血病による呼吸不全で亡くなられたのです。59歳でした。

 若き日、汚職を捜査する警視庁捜査2課担当の記者(通称・ニカタン)として鳴らし、後に東京社会部の遊軍長やデスク、部長として後進の指導にあたられました。

 現実をきちんと踏まえたうえで、論を張ることのできる数少ないジャーナリストでした。その言は、書正論のみずみずしさと取材力に支えられた絶妙の現実感覚を兼ね備えていました。国家権力におもねることがなかったのはもちろん、朝日新聞の社内でも、おかしいことはおかしいと言ってはばかりませんでした。たとえ相手が社長や取締役であってもです。私が知る限り、最も朝日らしい朝日新聞記者だったと思います。

 人間的にも誠実で包容力のある人でした。外では「進歩派」で通っていても、本人は権威主義のかたまりのような記者も少なくないのですが、鈴木さんは私のようなかけ出し記者の意見にもよく耳を傾けてくれました。自然と周りに記者が集まり──本人にその気があったのかどうかは知りませんが──1つの派をなしたのも当然の成り行きだったといえましょう。

 派閥のぜひはおくとして、鈴木さんに派を構え、それを束ねる度量と見識があったことは確かです。

外部からの厳しい批判にさらされ、朝日新聞自体がふらつき自信を失っているこのようなときにこそ、朝日には鈴木さんのようなリーダーが必要でした。残念というほかありません。

心からご冥福をお祈りします。

22:42:41 | journalist | 4 comments |